今朝届いたばかりの手紙の封筒は、可愛らしい白いレースをあしらったデザインのもので、宛名は丁寧な字で書かれている。その封筒の封をそっと開けると、中には封筒と同じデザインの便箋が三枚、折り畳まれて入っていた。さらにその折り畳まれた便箋を広げると、これまた可愛らしい、パンジーの花で作られた押し花の栞が挟まれている。
手紙は挨拶で始まり、それから彼女の今現在の様子や、彼女の仲間なのだというポケモン達の様子が丁寧に綴られており、読み進めるうちに自然と顔が綻ぶのが分かった。
街から離れた、さらには周りが森に囲まれた場所にある屋敷だったために、自分達の代わりに屋敷を管理してくれないか、と親戚中に頼んだ所、親戚一同揃って渋い顔をし、親戚の年長者達が半ば強引に彼女にその役目を押し付けた訳だが、彼女は今では「この屋敷に住むことが出来て良かった」と言ってくれている。
そして以前、彼女に手紙で「屋敷の管理を任せっきりだが、大丈夫か」という旨を尋ねたことがあったが、それについての彼女の返事も書かれていた。その返事はこうだ。
―――お二人のお屋敷は大変広く、私とチルタリスの二人だけでしたら寂しいものだったでしょう。でも、私とチルタリスは大丈夫です。このお屋敷に来てたくさんの仲間が出来ました。その仲間については、次の手紙で写真を送ろうと思います。お二人の大切なお屋敷に、野生のポケモンを勝手に棲まわせていいものかと悩みましたが、このお屋敷は彼らにとっても大切な棲み処になっているようなので、どうかお許し下さい。どのポケモンも、優しくて仲間思いの良い子ばかりです。
彼女はどうやら、屋敷での生活を楽しんでくれているようだ。彼女が屋敷を代わりに管理してくれて、本当に良かったと思う。
「なんだ、手紙か?」
手紙を読んでいると、今ではすっかり体調の良くなった主人が毎朝の庭の手入れを終えて戻ってきたので、「さんからよ」と告げて手紙を渡した。
「さん、元気そうだな」
「そうねえ」
手紙を読む主人の目元は、眩しそうに細められている。主人はじっくりと手紙を読むと、元のように手紙を折り畳み、封筒にしまった。
「……嬉しいことを言ってくれるな」
「最後の所かしら?」
「そうだよ」
―――今ではこのお屋敷は、私にとってたくさんの大切なものが詰まった、まるで宝箱のような存在です。このお屋敷に来れて良かったと、心から思います。
最後にはそう書かれていた。自分達が大切にしてきたものを、宝箱のように大切にしてくれる彼女にはいくらお礼を言っても足りないだろう。早速新しい封筒と便箋を用意すると、私は彼女への返事を書くためにテーブルに向かったのだった。